昨今、経皮吸収によって有害化学物質が体に与える害を回避することを謳ったオーガニック製品が、デリケートゾーン用の洗浄剤やシャンプーなど少しずつ増えてきております。
毎日使う日用品に含まれる有害化学物質は、とくに女性の体への悪影響が大きいといわれており、婦人病のリスクを高めることから、注意が必要とされております。
「女性を悩ませる経皮毒」(日東書院)の著者であり、経皮吸収の婦人科系疾患・胎児への影響や胎内記憶の研究の第一人者としても知られる、産婦人科医・池川クリニック(横浜)院長の池川明先生に、経皮吸収がもたらす婦人病リスクについて記事がありましたので掲載します。
「近年、20年前にはほとんど見られなかった子宮内膜症患者が急増し、また、月経不順や不妊症の増加、婦人科系ガンの発症率なども軒並み上昇している。その原因の一つとして、有害化学物質の経皮吸収による影響を、婦人科医として大変危惧していた。出産や手術の際に子宮からシャンプーの匂いがしたり、実際にシャンプーを変えることで不調が軽くなった患者をこれまでたくさんみてきた」
と、以前から経皮吸収が及ぼす女性への影響を不安視していたという池川先生。
「経皮吸収については、1900年代の終わり頃、石油系の化学合成物質が洗剤などの日用品にも多く使用されるようになり、それが皮膚のバリア機能を通過して健康被害を起こす可能性が高いことを懸念した薬学博士たちが『経皮毒』という言葉を使って、世に警鐘を鳴らしたことがありました。しかし当時は、皮膚は外界からの異物の浸透を防ぐバリア機能を担っているため、皮膚から物質が吸収されることはほとんどないといわれ、その説を疑問視する声が高かった」と、当初は経皮吸収に否定的な意見も多かったと説明しています。
「その後、20年以上を経た現在、物質が皮膚を通過する可能性について、ほとんどの科学者・医学者たちの容認するところとなり“経皮吸収”という言葉が広く流布するようになりました。
今年1月19日には厚生労働省から、『アレサガテープ』というアレルギー性鼻炎を対象とした経皮吸収型製剤が認可されております。この薬は、アレルギー性鼻炎の治療薬として血中の薬物濃度を維持することが可能で、1日1回の貼付で24時間安定した効果が得られる記載されています。様々な研究や、皮膚に貼るパッチ薬の普及なども含め、水回りで使われる日用品などに含まれる有害化学物質が皮膚から吸収される可能性は、もはや否定できない時代となりました」と、現在では経皮吸収についての認知は広がってきていると言います。
「とくに、婦人病を予防する上でもっとも気をつけたいのが有害化学物質の経皮吸収。例えば、口から有害化学物質を吸収した場合は、肝臓などの消化器官を通り分解・排出される比率も高いが、皮膚からの吸収は消化器官を通らないため、10日経っても1割程度しか排出されないとのこと。また、私たちの表皮を形成する角質層は、外界から異物を入ってくるのを防ぐ皮膚バリアーの役割を果たしているが、分子量が小さく脂溶性の物質ほど通過しやすいという特性を持っている」とのこと。
「野生動物の生殖異常・発育異常などを引き起こす原因になっている物質を“環境ホルモン”と呼ぶが、環境ホルモンと疑われる化学物質や、発ガン性・アレルギーの要因ともなる有害化学物質は、まさしく分子量が小さく脂溶性になります。シャンプーや洗剤などに含まれる様々な合成化学物質は、1回の使用で吸収される量はわずかでも、経皮吸収すると解毒・排泄されにくく、さらに有害化学物質は脂肪組織に蓄積されやすい特徴があるため、子宮や乳房に蓄積されてしまうリスクが高くなります」と、女性はシャンプーや洗剤などといった日用品からの経皮吸収に注意が必要なのだと訴えております。 「経皮吸収は皮膚の薄さなどによって吸収率が異なり、腕の内側を1とすると、頭皮は3.5倍、脇の下が3.6倍、ひたいが6倍、ほほ・あごが13倍、背中が17倍、性器は42倍もの吸収量が確認されている。口の中や性器の中・肛門など、粘膜で覆われた部分は角質層がないため、もっとも吸収されやすい部位と言えます」と、経皮吸収しやすい部位について言及されました。
「環境ホルモンは、女性ホルモンの一つであるエストロゲンとよく似た作用を持っているため、体内に蓄積されるとエストロゲン依存の婦人病を引き起こす可能性があるといわれています。毎日使用する日用品には、環境ホルモンの指摘を受けていなくても危険性がある物質が含まれていることがあります。中でも、水と脂質を融合させる効果を持つ合成界面活性剤は、角質層の細胞壁を破壊して皮膚バリア機能を弱めてしまう化学物質のため、強すぎるものは避けることが重要になります」とのこと。
ボディシャンプー・シャンプー・歯磨き粉など洗うための日用品の製造には界面活性剤が欠かせませんが、体への安全を考えたときに、一体どんな種類の界面活性剤が使われているかを確認することが大切であると教えてくれました。
最近では、無添加・ナチュラルを謳った商品も増えておりますが、購入する際には、その言葉に惑わされず、自分自身を守るためにも全成分をチェックして、“硫酸、スルホン酸”といった洗浄成分が使われているものは、刺激性が高いので避けたほうが良いとのことです。成分表示は含有比率が高い順に表示されますが、通常、一番多いのが水で、その次から界面活性剤になるため、そこをチェックして欲しいです。
そして、シャンプーなどのヘアケア製品については、「とくに、子宮に優しい商品を慎重に選んでほしい」と、池川先生は、産婦人科医の立場から警鐘を鳴らしています。
経皮吸収という意味では、頭皮の吸収率は3.5倍であり、子宮からも遠い場所なのに、なぜなのでしょうか?
「有害化学物質による健康被害や胎児に対する影響などについては、化学的な実証が難しいものもありますが、私の経験上、患者の中で、シャンプーを変えて、子宮内膜症などの婦人科系疾患の症状が良くなったり、帝王切開のお産でシャンプーの匂いがすることもありました。シャンプーは、頭皮が体の他の部分より経皮吸収しやすいことに加え、洗浄剤として脂溶性の合成界面活性剤を多く用い、保湿剤・酸化防止剤などの有害性が疑われる合成化学物質も複数使用されております。さらに、入浴時は皮膚温度が上昇していて経皮吸収がしやすい状態にもかかわらず、毎日使用することが多いのです」と、シャンプーの懸念材料を指摘しています。
「シャンプーが子宮内膜症などの婦人病を発生させる因果関係については、合成界面活性剤が水道水中の塩素と反応し、その生成化合物としてダイオキシンが発生、頭皮などから吸収されてエストロゲンの働きをかく乱していると考えられています。1回のシャンプーで吸収される量はごくわずかですが、体に強い影響を及ぼす合成界面活性剤が含まれていると、そういった有害化学物質の経皮吸収率を促進し、体内に吸収されてからも浸透率が高くなります。そして、脂肪にたまりやすい化学物質は、乳房や子宮などにたまり、体内で解毒・排泄されにくくなってしまうのです」と、シャンプーからの経皮吸収が婦人病のリスクを高める理由について解説してくれました。
「経皮吸収が懸念される有害物質には、環境ホルモンの指摘は受けていないものの危険性を疑われる物質が多数含まれており、妊娠すると赤ちゃんに簡単に移行してしまうものもあります。日本は欧米に比べて禁止成分が少なく、オーガニックの明確な基準も決められていないが、日用品は、使用する製品を自分で選択することができます。口から入るものだけではなく、皮膚から入るものについても、まずは体に悪そうなもの、子宮に悪そうなものは買わない、使わないことから始めるとよいのではないでしょうか。婦人病の発症を予防するためにも、子どもたちの未来を守る自分自身でよく調べて判断した上で、冷静に対処してほしいです」と、自分の体だけでなく、生まれてくる子どもの健康のためにもシャンプー選びを見直してほしいと述べておられました。
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